オランダ出張:その2

だいぶ更新が止まってしまいましたね (^_^;A 月1更新の意気込みでしたが、忙しさがこうも重なると現実的に厳しいので、マイペースに行きたいと思います。

 

今回はオランダ出張の目的でもありましたイベント、オランダのユトレヒトにあるDutch Game Gardenにて開催された「Japan Business day」での登壇と訪問させて頂きましたゲーム開発会社についてご紹介させて頂きたいと思います。なお下記は日本デジタルゲーム学会(http://digrajapan.org)の学会誌にも寄稿させて頂いております。

■Japan Business Day

Dutch Game Garden はユトレヒト市とユトレヒト州によって支援され、40以上のゲームスタジオが利用しているインキュベーションセンターです。パートナーにはオランダのゲーム協会(DGA:Dutch Games Association)、ユトレヒト芸術大学(HKU)やその他多くの有名な企業が名を連ねているのが特徴的です。またユトレヒト市以外にも3ヶ所(Breda、Hilversum、Twente)に同じインキュベーションセンターがあるそうです。

 

ユトレヒトのDutch Game Gardenは、ユトレヒト駅に併設しているビルのフロアに位置しており、駅から外に出ないでオフィスまで移動できるのには驚きました。中は複数の部屋に別れており、3〜10人の小規模のゲーム会社が複数利用しているとのこと。少し人数の多い会社は複数の部屋を利用しその規模に応じて臨機応変に対応しているそうです。また共有スペースにはカンファレンスルームやソファ、コーヒーメーカー、アーケードゲーム機なども置かれており、オープンなスペースとなっており、雰囲気も良いのが気に入りました。ゲームスタジオ以外にも起業家、投資家、学校関係者、政府関係者など多くの人の交流の場となっているそうです。Dutch Game Gardenでは、カンファレンスルームを利用して、毎月様々なイベントも開催されており、今回の「Japan Business Day」はその1つでした。

 

時間になるとカンファレンスルームに人が集まりだしまし、およそ40〜50名ほどで満席になりました。登壇者は4人。私は2番目。私のプレゼン内容は辿々しい英語でしたが、日本のゲーム市場の規模と現状についてファミ通白書や各市場調査のデータを元に説明をしました。またシリアスゲームという切り口で2020年から義務教育となるプログラミング教育や、毎年伸びている訪日外国人向けサービスなどについても可能性があることを説明させて頂きました。たぶんかなり酷い英語でのプレゼンではありましたが、多くの質問を頂き手応えを感じ大変嬉しかったです。。このイベントの様子は後ほど「Opportunities in the Japanese Games market for Dutch companies」として記事にもなっていますので是非こちらも御覧ください。

 

■企業訪問:active cues社

まず初めに訪問したのが、Dutch Game Garden にオフィスを構えるactive cues社でした。私はどうしてもこの会社に訪問したく、アポが取れたときは大変嬉しかったです。理由はこの会社では「Tovertafel」と呼ばれる認知症患者向けのゲーム機とそのソフトウェアを開発しているところに大変興味があっためです。

 

このゲーム機は、天井のシーリングライトのところに設置し、真下のテーブルにプロジェクターで映像を投影しながらセンサーによる人の手を検知し、様々なゲームを楽しむものになっています。例えば映像で魚が泳いでいるときに手を出すと逃げ出したり、又は寄って来るなど。このゲーム機は病院や老人ホームなどに販売しており、テーブルを囲んで利用者と介護者のコミュニケーションツールとして利用することを想定しているそうです。内蔵のゲームは複数あり、リモコンを利用して切り替えることができます。

 

私は数年前に東京ゲームショウのオランダ大使館ブースでこれを触ったことがありました。そのときはこれがどのようなゲームかが分からなかったのですが、認知症患者向けのゲームと知り大きな衝撃を受けたのを覚えています。この度のオランダ視察でこのような素晴らしい製品を作っている会社はどのようなところなのか?どのような方がどのように作っているのか?など、どうしても知りたかったのが理由です。現在ヨーロッパを中心に多くの施設での導入が進んでいると聞きました。

 

2つの病院と共に既に10年近く研究を続けており、エビデンスを積み上げながら、高度学習障害者にとって、認知症患者にとってより良いゲーム内容とは何かを探り、この「Tovertafel」に成果が集約されているとのことです。これには大変感動しました。

下記ビデオを見るとその素晴らしさが伝わるかと思います。

■企業訪問:GainPlay Studio

 次に訪問した会社も同じDutch Game Garden内にオフィスを構えるGainPlay Studio社です。この会社では人体の生体信号や動きをスキャンしゲーム内に応用するという研究と開発を行っているとのことでした。まず紹介して貰ったのが「MindWave」と呼ばれる小さなヘッドセットをつけて遊ぶゲーム「Daydream」と「MindLight」でした。

ヘッドセットは小さな金属のセンサーを額にあてて装着します。これによってリラックスをしているかどうかを検知し、それがゲーム内に反映される仕組みです。

 

Daydreamでは自然の風景が映し出され、それを見ていると曇りになったり晴れて花が咲き乱れたりします。このリラックス度合いによる映像の変化によって、ユーザーを瞑想的な世界を疑似体験しながら、ストレスの軽減し血圧を下げ、静穏に心を落ち着かせるのが目的のゲームです。

もう一方のMindLightでは、ユーザーが暗闇の屋敷の中を探検するゲームです。ゲーム内のキャラクターの頭についているライトはユーザーがリラックスすればするほど明るく周囲を照らしようになります。モンスターはこの光の中には入って来られません。ユーザーは暗闇で動くモンスターを見ても常に平常心でリラックスした状態が求められっます。

 

このゲームは、不安障害に苦しむ子供たちのために開発されたときき驚きました。子供が自分の不安症状を管理し、克服するためのエビデンスに基づいて設計されているそうです。

 

ゲームによって子供たちが自分の不安症状を克服していくなんて大変素晴らしいですね!

■企業訪問:IJsfontein

次に訪れたのはオランダのアムステルダムにオフィスを構えるシリアスゲーム会社の中でも大手のIJsfontein社です。アムステルダム駅から徒歩10分ほどのところに位置し、アムステルダムらしい歴史を感じる大きな建物にオフィスが入っていました。紹介頂きまた同行も頂いたMonkeybiznizのDimmeさんには心から感謝です。

 

約20年前の90年代よりシリアスゲームに注目し、今では教育、医療、E-Learning、インタラクティブな設備、シリアスゲーム、ゲーミフィケーションなど多くの事業を展開している歴史ある素晴らしい会社でした。

 

オランダでは子供向けのほとんどのシリアスゲームは「無料」で遊べるので、そこにお金を払って遊ぶユーザーはいないというのが現状だそうです。B2C向けではビジネスが難しく、主にB2C向けの案件が多いとのこと。日本の状況ではB2C向けでこのようにゲームが活用されている事例はまだまだ少ないので、大変興味深い内容でした。

 

シリアスゲームの開発は企業や政府、病院より求められる訓練や教育などの「目的」のために制作・納品するというスタイルだそうです。例えば手術の手順を学ぶための「abcdeSIM」や、情報セキュリティを学ぶための「Elevator」など、その目的がはっきりしています。

 

病院や大学と一緒になり目的を達成するための理論やエビデンスに基づいて制作しているのが素晴らしいです。クライアントとまずは小さな仕事から信頼を積み上げビジネスとして成長させて来ていることに大変感銘を受けました。日本でもこのようなビジネスが広げられると私は信じているので、まずは1つずつ、信頼を作っていくことが大事ですね。

■企業訪問:Grendel Games

そして最後に訪れた会社は、ユトレヒトから電車で2時間ほど北にあるレーワルデンという街にオフィスを構えるGrendel Games社です。この会社も今回どうしても訪れたい会社でした。理由はこの会社のホームページに掲げている理念である。ミッション・ステートメントに大変感動したからです。

 

「ゲームは楽しくあるべき!」

 

として、シリアスゲームを普通のPS4やWiiで遊ぶコンソールゲームと変わらないぐらい面白くあるべきという理念には大変共感を受けました。

 

オフィスに着くとまず驚かされたのは、創業者のTimさんがビルの前で待っていてくれたことでした。すぐにオフィスを案内してくれるのですが、オフィスの入っているビルは元刑務所だったというのには驚きました。半分が市の図書館として利用され、もう半分がビジネス・オフィスとして利用されており、確かに刑務所としての面影が随所に確認できました。

 

そしてなんと、こちらの会社にも紹介頂いたMonkeybiznizのDimmeさんに同行頂きました。本当にオランダの方の優しさには感動しました。

 

この会社ではWiiUで遊ぶことができるシリアスゲーム「Underground」というゲームをリリースしており、これを見たときの衝撃が忘れられません。

 

これは腹腔鏡下手術の練習をするためのゲームです。WiiUのコントローラーを利用して2本のマニピュレータを操作しキャラクターの障害物を取り除きながら地中を探検することによって操作をより正確に、素早い判断で操作することを取得していきます。これは実際に医学生たちが購入しその練習に利用しているそうです。

 

昼食を取りながらTimさんより、創業当初の話や「Underground」の制作秘話などを聞くことができた。これには感動しました。いろいろ話をして頂いたTimさんに心から感謝しています。

 

会社を設立した当初は病院で使う機器の制御プログラミングから始まり、少しずつ様々なソフトウェアの開発の仕事を得るようになったそうです。そこから学生が腹腔鏡下手術の練習をするのに高価な機器を使わず、ゲームを活用できないか?ということになり開発が始まったそうです。そこから研究を重ねいくつかの困難な状況を乗り越えつつ「Underground」がリリースされました。今ではWiiUと合わせても数万円で購入でき、多くの医療学生がその練習に利用しているという。

 

その後、肥満の子供のためのゲーム「Garfield vs Hot Dog」や、脳梗塞後遺症(ABI)の患者のリハビリのためのゲーム「Gryphon Rider」など紹介頂きました。

 

ゲームはどれもがエンターテイメント向けのゲームとしても引けをとらない作りとなっており、子供がそれを普通の遊びのためのゲームとして選んでも不思議ではないようにすべてが配慮されていました。

 

シリアスゲームのあり方としてのお手本のような素晴らしい話をたくさん聞くことができた。本当に素晴らしいですね!!!!

■魔法の杖はなかった

オランダのシリアスゲーム会社を訪れて感じたことは、

「魔法の杖はなかった」

ということでした。

 

オランダには何か特別な施策や方法があるかとある意味期待をしていました。しかし魔法のように簡単に叶えられるものは1つも存在しなかった。

 

 

初めに1つの病院、1つ施設で困っていることを解決し、ゲームが認められ、大学も交えて一緒に研究が始まり、少しずつ少しずつエビデンスを集めながら、ゲームの有効性に対する

「信頼の積み上げ」

によって産業として発展してきたということでした。本当に素晴らしいですね。

 

でもこれは日本でもきっと可能であると、私は信じています。1つでも早く何か突破口となるゲームを「作りたい!」という思いでいっぱいになりました。

 

ゲームの力を活用し、より良い社会と未来へ一歩ずつ「信頼」を積み上げて行きたいですね!